生涯を富士山の撮影に捧げ、千円紙幣の裏面に描かれた本栖湖の「湖畔の春」を残した写真家・岡田紅陽。彼の作品が証明したように、富士山の風景写真は天候の巡り合わせと光の角度が織りなす一期一会のドラマだ。
現在、五重塔越しに富士を望む新倉山浅間公園には、紅陽の系譜を継ぐ世界中の写真家や観光客が押し寄せる。彼らの多くが狙うのは、太陽が山頂に重なり宝石のように輝くダイヤモンド富士の瞬間だ。この奇跡的な光景を写真に収めるには、天文学的な太陽軌道と、地表から山頂までの完璧な大気の透明度が重ならなければならない。わずか数分のシャッターチャンスを逃さないため、視程予測を緻密に読み解く作業が撮影者たちの日常となっている。