借り上げ社宅を活用する上で絶対に避けて通れないのが、税務調査による「給与課税処分」のリスクです。会社が家賃全額を負担したり、従業員から徴収する家賃があまりに低すぎたりすると、税務署から「実質的な給与(現物給与)の供与である」とみなされ、追徴課税を受けてしまいます。
給与課税を回避するための法的絶対条件が、国税庁が定める「賃貸料相当額の計算方法」に基づき、従業員から一定額以上を家賃として徴収することです。
一般的な従業員向け賃貸物件(小規模住宅:床面積が耐火建築物で99平米以下、それ以外で132平米以下)の場合、賃貸料相当額は以下の3つの合計値で算出されます。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
- 12円 × (その建物の総床面積(平米)/ 3.3平米)
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%
この複雑な計算式で算出される金額は、実際の相場家賃(実家賃)のおおむね10%〜20%程度という極めて低い金額になります。国税庁の基本通達では、「従業員から賃貸料相当額の50%以上を徴収していれば給与課税されない」と定められています。つまり、実家賃の10%〜20%のさらに半分(実家賃の5%〜10%)を社員から徴収すれば法律上はクリアできる計算です。
ただし、実務上の借り上げ社宅の家賃負担割合の相場は、企業の福利厚生予算との兼ね合いから「会社負担50%:従業員負担50%」あるいは「会社負担70〜80%:従業員負担20〜30%」程度に設定されるケースが一般的です。
一方、注意を要するのが役員借り上げ社宅の条件です。役員は従業員に比べて税務署の監視が格段に厳格であり、以下の3区分によって計算式が厳格に分けられています。
- 小規模役員社宅(耐火建築物99平米以下):従業員と同様の計算式が適用され、家賃の10〜20%程度の自己負担で済むため極めて有利。
- 一般役員社宅(小規模を超える広さ):自己負担割合が跳ね上がり、実家賃の概ね50%前後の徴収が義務付けられる。
- 豪華役員社宅(床面積240平米超やプール等の設備):制度の適用が一切認められず、実家賃の全額(100%)を自己負担しなければ全額給与課税される。
これらの運用基準を社内全体で統一し、税務署への対抗要件を備えるために欠かせないのが社宅管理規程の作成方法です。対象者の選定基準、上限家賃、家賃負担割合、契約期間、退職時の対応などを網羅した社内規程を整備し、取締役会や労使間で正式承認を得ておくことが法的な大前提となります。