アクセサリー制作で最も多用され、かつ最もトラブルを生んでいるのが「固結び(本結び)」の過信だ。左右から引っ張れば締まる構造は、つるつるとしたテグスの表面張力の前には無力に近い。時間が経つと振動や体温で緩み、端からスルスルと抜けていく。
現場の作家たちが標準装備としているのは「8の字結び(エイトノット)」、あるいは本結びの輪を二重にくぐらせる「サージェンズノット」だ。糸の交差点が増えることで生じる抵抗が、結び目の自己保持力を跳ね上げる。さらに陥りがちなのが「瞬間接着剤で固めれば安心」という思い込みだ。シアノアクリレート系の接着剤は硬化時に発熱し、ナイロンを硬化・脆化させる。引っ張りには耐えても、横からの衝撃でガラスのように砕けて外れる。留めるなら柔軟性を保つ弾性接着剤か、透明マニキュアを爪楊枝の先で微量乗せるのが職人界隈の鉄則だ。