2015年、又吉の書いた『火花』が第153回芥川龍之介賞を受賞したニュースは、日本中に大きな激震を走らせた。選考を行った日本文学振興会による発表直後から全国の書店で売り切れが相次ぎ、単行本・文庫を合わせた累計発行部数は300万部を超える空前のメガヒットを記録。それまで純文学に馴染みのなかった若者層をも巻き込み、出版業界全体を大いに活気づかせた。
売れない漫才師二人の葛藤と青春を描いた本作は、単なる芸人のサイドビジネスとして書かれたものではなかった。自身が長年お笑い界の現場で舐めてきた甘いも酸っぱいも、すべてを注ぎ込んだ真摯な表現だったからこそ、読者の心を強く打ったのだ。「芸人が芥川賞を獲る」という快挙の裏には、深夜のファミレスや移動中にひたすら原稿用紙と向き合い続けた、泥臭い執念が存在していた。