物語の主人公「私」は、小学生の頃まで何でも話し合える親友だった夏美との間に、中学に入ってから目に見えない壁を感じ始める。新しいグループで器用に立ち回る夏美と、取り残されたような疎外感を覚える主人公。誰もが思春期に体験するこの不器用なすれ違いが、作品の骨組みを形作っている。
作中で強い印象を残すのが、庭に植えられた「銀ぐみ」の木だ。初夏、星の形をした小さな花が静かに舞い落ちる光景は、美しくもどこか儚い。変わっていく人間関係に対する戸惑いと、変わりたくない自分自身の葛藤。言葉にすれば安っぽくなってしまう中学生特有の繊細な感情が、銀ぐみの花びらという美しい情景描写に見事に昇華されている。