いま改めて浮き彫りになるのは、あの伝説の日本シリーズ舞台裏で起きていた生々しい人間模様だ。独自取材に対して語られたのは、当時の広島ベンチとの緊迫した空気感、古葉竹識監督との無言の駆け引き、そして三塁走者だった藤瀬のわずかな動きを察知した瞬間の研ぎ澄まされた直感の全貌である。
「あのとき、ベンチの動きに腹が立ったのは事実。だが、マウンドで投げているのは自分自身だという強烈な意地が、最後のカーブを生んだ」。阪神・広島での輝かしい記録の裏に隠された首脳陣との衝突やトレード通告の夜の真実。生けるレジェンドの口から語られる言葉には、妥協を一切拒み続けた男の業と、グラウンドに捧げた純粋な情熱が濃密に刻まれている。