美術館やギャラリーの展示会場に足を運ぶと、他の美術展とは明らかに異なる熱気が漂っている。かつてのリアルタイム連載を知る往年のファンに混ざり、展示室の過半数を占めるのは20代を中心とする若い世代だ。友人同士で訪れた女性客が「このリップの色とアイラインの引き方が最高に可愛い」「髪の毛のハイライトの入れ方が神がかっている」と熱心に鑑賞する光景が日常的に見られる。
公式グッズ売り場では、定番のポスターやポストカードセット、展示会限定Tシャツを買い求める列が途切れない。SNS上の声を検証してみても、「部屋に飾るだけで空間の雰囲気が一気に垢抜ける」「流行の移り変わりが早い時代だからこそ、江口寿史の絵のタイムレスな良さが際立つ」といった投稿が目立つ。単なる懐古趣味ではなく、現代のライフスタイルに溶け込む洗練されたインテリア・カルチャーとして消費されているのが現場の実態である。
また、展覧会の会場内で催されるサイン会やライブスケッチイベントでは、ファンの目の前で下描きなしに迷いなくペンを走らせる姿が目撃される。現場を目撃した参加者からは「迷いのない1本の線が生み出される瞬間の緊張感と美しさに鳥肌が立った」という証言が多数寄せられており、その圧倒的な技巧の確かさが生で証明され続けている。