バッジを外した菅直人が選んだのは、単なる隠遁生活ではなく「現場からのエネルギー変革」だった。政界引退後、彼が最も精力を注いでいるのは、机上の政策論争を超えた再生可能エネルギーの普及運動である。
「政治家としての役目は終えたが、一人の市民としての責任は終わっていない」
周囲にそう語る菅の日常は過密だ。全国各地で開かれる小規模な勉強会や環境フォーラムに招かれれば、新幹線とローカル線を乗り継いで自ら足を運ぶ。かつて首相官邸で日本中を指揮した男が、十数人の市民を前にマイクを握り、膝を突き合わせてエネルギーの地産地消を熱弁する。派手な警護団もいなければ、取り巻きの秘書官もいない。そこにあるのは、権力から解放された一人の活動家の純粋な熱量だ。