スコアボードにゼロが並び続けた9回裏、1死走者なし。打席に入った佐藤輝明の表情には、研ぎ澄まされた集中力だけが宿っていた。カウント1-1からの3球目、相手クローザーが投じた外角高めの失投を逃さない。フルスイングから放たれた打球は、乾いた衝撃音とともにライトスタンドの漆黒の闇へ吸い込まれていった。バットを放り投げ、ゆっくりと歩き出した背番号8。その確信に満ちた姿に、本拠地は狂乱の坩堝と化した。
この劇的なサヨナラ本塁打の伏線となったのが、8回裏から9回表にかけてのベンチワークだ。終盤の勝負どころで相手ベンチの継投策を逆算し、あえて早いカウントから狙い球を絞らせた指示が見事に結実した。一打サヨナラの重圧がかかる局面で、選手の持ち味である長打力を一切縛らず、思い切りの良さを引き出した采配の妙。ただの力勝負ではない、綿密なデータ分析と現場の直感が合致した必然の一発だった。