8回を終えて1-3。沖縄尚学の敗色は濃厚に見えた。相手投手の150キロを超えるストレートと極上のスライダーの前に、打線は7回までわずか3安打に抑え込まれていたからだ。しかし、ベンチ裏の空気は違っていた。「まだ終わっていない」。監督の短い一言が、ナインの目に再び火を灯す。
9回裏、先頭打者が粘って四球をもぎ取ると、続く打者が三遊間を破る安打で出塁。送球エラーも絡み、無死二、三塁の絶好好機を迎える。だが、相手投手も意地を見せ、後続を内野フライと見逃し三振に打ち取り、一気に2死まで漕ぎ着けた。打席には、この日ここまで3打席無安打の5番・比嘉が入る。
初球の149キロ直球を見送りストライク。そこから粘りに粘り、フルカウントからの10球目だった。相手バッテリーが選択したのは、この試合最も冴えていた外角低めへのスライダー。比嘉のバットは迷いなく振り抜かれ、打球は右中間へ吸い込まれていった。「ボールが止まって見えた」。試合後、汗を拭いながら比嘉はそう振り返った。