時計の針を1990年に巻き戻してみよう。サザンオールスターズの桑田佳祐がメガホンを取った東宝配給の映画『稲村ジェーン』。数千人規模のオーディションを勝ち抜き、主役に大抜擢されたのが加勢大周だった。
スクリーンに映し出された長身と憂いを帯びた眼差し、波打ち際で見せた屈託のない笑顔。桑田佳祐が直感で見抜いたその圧倒的な華は、映画の公開とともに爆発的な社会現象を巻き起こす。演技の巧拙を超えた強烈なフォトジェニックさは、観客の網膜に焼き付いて離れなかった。
東宝のスクリーンを飾ったその瞬間から、日本の芸能界は新たな時代の寵児の誕生に沸き返った。彗星のごとく現れた若きスターの存在は、テレビ界のプロデューサーたちをも瞬時に虜にしていく。