和歌山県警が事件発生から逮捕まで約3年もの歳月を要したのは、野崎氏の遺体から覚醒剤成分が検出されたものの、現場となった豪邸内に注射痕がなく、「経口摂取(口から飲み込んだ)」による急性中毒死であったためです。経口摂取の場合、混入された飲食物の特定や、誰がどのような経緯で摂取させたかの特定が極めて困難になります。
捜査当局が逮捕に踏み切った決定的な理由は、以下の客観的データの整合性にありました。
第一に、須藤被告の通信端末のデジタル・フォレンジック調査によって判明した覚醒剤密売サイトへのアクセス履歴です。事件前の2018年4月、須藤被告が東京都内で密売人と接触し、覚醒剤数グラムを裏取引で購入した足取りが防犯カメラ映像や通信ログから割り出されました。
第二に、野崎氏が死亡した当日の行動記録です。家政婦や会社関係者が邸宅を離れ、野崎氏と須藤被告の2人きりになった空白の時間帯(午後5時過ぎから午後8時頃)に、野崎氏が覚醒剤を摂取したと推定される医学的所見が提出されました。体内から検出された覚醒剤の量は数グラムとみられ、これは通常の一回使用量(0.02〜0.03グラム程度)を遥かに超える致死量でした。