1963年に公開された『伊豆の踊子』は、吉永小百合のキャリアにおけるもう一つの決定打となった。川端康成の名作文学を原作とする本作で、彼女が演じた旅芸人の踊子・薫の美しさは、今なお語り草となっている。伊豆の自然美と溶け合うように佇む吉永の横顔は、原作者である川端本人をも「薫そのものだ」と深く唸らせた。
可憐さの奥に潜むかすかな憂い、そして身分違いの恋に揺れる繊細な心情表現。この作品によって、彼女はティーン向けのアイドル的人気を完全に脱却し、本格的な演技派女優としての名声を不動のものにした。フィルムに焼き付けられた彼女の佇まいは、日本映画が到達した純文学的叙情詩の極致として語り継がれている。