1994年7月26日、吉行淳之介は肝臓がんのため70歳でこの世を去りました。ダンディズムを貫いた作家の死は日本中に衝撃を与えましたが、その直後から生々しい現実問題として浮上したのが遺産相続と著作権の帰属です。
淳之介は生前、宮城まり子に対して多大な支援を行っていたものの、法的な遺言や財産分与の手続きを明確に残していませんでした。そのため、莫大な印税を生み出す著作権や遺産は、民法上の正規の法定相続人である本妻・吉行文枝と長女へと引き継がれることになります。
最期を看取り、長年生活を共にしたまり子には法的な相続権がなく、この厳然たる法と感情の落差は、当時ワイドショーや週刊誌などでも大きく報じられました。愛と形式、情理と法理が鋭く対立したこの結末は、無頼派作家の幕引きにふさわしい波紋を世に残しました。