鶏肉を安全に扱うための大前提として、まず食品表示法に基づく「期限表示の定義」を明確に整理しておく必要があります。検索窓には「鶏肉 賞味 期限切れ」と打ち込まれることが多いものの、スーパーや精肉店で販売される生の鶏肉のラベルを注視すると、印字されている文字のほぼ100%が「賞味期限」ではなく「消費期限」です。
農林水産省および厚生労働省のガイドラインにおいて、この2つは明確に区別されています。
- 賞味期限(品質保持期限):スナック菓子、カップ麺、缶詰など品質が劣化しにくい食品に適用。「美味しく食べられる期限」を指し、期日を過ぎても直ちに衛生上の問題が発生するわけではない。
- 消費期限(安全限界):食肉、生鮮魚介類、惣菜など急速に劣化が進む食品に適用。「安全に食べられる期限」を指し、定められた保存温度(通常4℃以下)を守った上で安心して口にできる最終期日を示す。
精肉メーカーが消費期限を設定する際は、微生物検査によって品質保持の限界日数を割り出し、そこに「0.7〜0.8」程度の安全係数を掛けて少し短めに設定するのが通例です。例えば、理化学的・細菌学的に製造後5日間安全が保たれる肉であれば、安全係数0.8を乗じて「4日後」を消費期限と定めます。
「安全係数が掛けられているなら、期限を1日や2日過ぎても理論上は平気ではないか」と考えがちですが、このマージンはあくまで「店頭から家庭の冷蔵庫へ運ばれる過程で温度が一定に保たれていた場合」を想定した設計です。買い物帰りの車内の温度上昇や、家庭用冷蔵庫の頻繁なドア開閉による庫内温度の揺らぎ(本来4℃以下であるべきところが8〜10℃まで上昇するケース)を考慮すると、設定された安全マージンは容易に消失してしまいます。