沖ノ鳥島は東西約4.5km、南北約1.7kmの広大な環礁(サンゴ礁)ですが、高潮時にも水没しない自然の陸地部分は「北小島」と「東小島」の2箇所しかありません。その大きさはそれぞれ数畳から数十センチ四方程度と極めて小さく、激しい波浪や地球温暖化に伴う海面上昇によって海中に沈んでしまう危険に常に晒されてきました。
もし自然の島が海面下に完全に水没してしまえば、国際法上の「低潮高地(干潮時のみ露出し、高潮時には水没する地形)」とみなされ、領海や排他的経済水域(EEZ)の基点としての資格を失うことになります。これを防ぐため、日本政府は1987年(昭和62年)から大規模な国家プロジェクトとして護岸工事に着手しました。
現場では、周囲に直径約50mの消波ブロック(異形ブロック)を円形に敷き詰め、内部を特殊コンクリートで固めるとともに、剥き出しになった自然石の風化・削剥を防ぐためチタン製の防護ネットで覆うという前代未聞の土木技術が投入されました。これまでに投じられた工事予算は累計で約600億円から700億円規模に達します。
一見すると巨額に思える費用ですが、沖ノ鳥島が存在することによって日本が設定できる排他的経済水域(EEZ)の面積は約40万平方キロメートルに及びます。これは日本の総国土面積(約38万平方キロメートル)を上回る規模です。
この広大な海域には、カツオやマグロなどの豊かな水産資源はもちろん、海底には次世代エネルギーやハイテク産業に不可欠なレアメタル(マンガン団塊、コバルトリッチクラストなど)が大量に眠っています。国の海洋資源主権を確保するための安全保障コストとして考えれば、護岸工事への投資は国家戦略上、極めて合理的な判断といえます。