1982年に女性デュオ「あみん」として『待つわ』でミリオンセラーを記録した岡村孝子は、ソロ転向後の1987年2月4日に5枚目のシングルとして『夢をあきらめないで』を発表しました。今や日本を代表するポジティブソングとして定着していますが、制作当時の本人の意図は全く異なるベクトルにありました。
当時の特番インタビューや自著・手記で語られた本人の告白によると、この楽曲は「夢を追って遠くへ旅立つ恋人への惜別と、自らの失恋を受け止める心情」を綴った私小説的なナンバーでした。「あなたの夢をあきらめないで」というサビのフレーズは、自分のもとを去っていく相手の未来を応援しつつも、引き止められない切なさを内包した別れの言葉だったのです。
本人が「失恋ソングとして作ったのに、応援歌として広まって驚いた」と振り返るように、発売当初はアルバム『liberte』の先行シングルという位置付けでした。しかし、聴き手が「私に向けられた応援」として自己投影しやすい客観的な歌詞表現が、時代背景とともに巨大な共感を呼ぶ原動力となりました。