この土地が持つ特別な佇まいは、歴史の表舞台に登場する偉人たちの足跡とも深く結びついている。古くは徳川家康が熱海の湯を江戸城まで運ばせ、その効能と風致を絶賛したことで温泉街としての地位が確立された。名湯とともに育まれた風光明媚な景観は、後の文人墨客を強く惹きつけることとなる。
明治期には、文豪・尾崎紅葉が執筆した不朽の名作『金色夜叉』の舞台として一躍脚光を浴びた。貫一とお宮のドラマが繰り広げられた熱海の海岸線と、静謐な梅の情景は、当時の日本人の憧れとなった。いま園内を歩いても、近代文学の香りと歴史の重みがふと足元から立ち上ってくるのを感じるはずだ。