北信介という男を語る上で欠かせないのが、発する言葉の持つ強烈な説得力です。彼の哲学の根底には、幼少期から大切に育ててくれたおばあちゃんの教えがあります。
「誰かが見とるよ」――神様でも他人でもなく、自分自身が自分の行動を見ているという祖母の言葉を忠実に守り、北さんは掃除や片付け、体調管理、挨拶、そしてバレーの基本練習に至るまで、あらゆる日課を愚直に継続してきました。
その生活態度から紡ぎ出される名言は、読者の胸を深く打ちます。
「喝采は要らん ちゃんとやんねん」
結果を出して褒められるためにやるのではなく、毎日の当たり前の練習やルーティンを狂いなくやり遂げること自体が大切であるという、北さんの本質を表す言葉です。
「反復・継続・丁寧は心地ええんや」
努力を苦行や特別なものとして捉えるのではなく、歯磨きや食事と同じように「習慣」として身体に染み込ませる姿勢。これこそが、大舞台でも一切緊張せず実力を100%発揮できる北さんの強さの源泉です。
一方で、論理的かつ容赦のない指導スタイルはチームメイトから「正論バズーカ」と恐れられています。風邪を引いて練習に来た宮侑に対し、「体調管理できてへんことを褒めるわけないやろ」「自己管理もできん奴を褒めるな」とピシャリと言い放つ場面は象徴的です。しかし、その正論は相手を攻撃するためではなく、相手の成長と健康を誰よりも真摯に願っているからこその言葉であり、後に宮侑自身が北さんへ絶対的な信頼を寄せるきっかけとなりました。