「職場の健康診断では貧血と診断されたことがない」という人でも、実は鉄不足に陥っているケースが非常に多く見られます。ここで鍵となるのが、体内の鉄の貯蔵庫である「フェリチン(貯蔵鉄)」の存在です。
血液検査で測定されるヘモグロビンは、いわば「財布の中の現金」です。一方のフェリチンは「銀行の定期預金」に例えられます。血液中のヘモグロビン濃度が正常値であっても、定期預金にあたるフェリチンが底をついている状態を「潜在性鉄欠乏(隠れ貧血)」と呼びます。
身体は生命維持を優先するため、鉄分が不足し始めるとまず心臓や脳などの重要臓器へ優先的に鉄を供給し、口腔粘膜や爪、毛髪への供給を後回しにします。そのため、ヘモグロビン値に異常が出る前の段階から「頻繁に口内炎ができる」「爪が割れやすい」「髪がパサつく」といった初期症状が現れるのです。特に毎月の月経で鉄を失う20代〜40代の女性において、原因不明の頻発する口内炎の背景にフェリチンの枯渇が潜んでいるケースは決して珍しくありません。