2026年の現在もなお、機械化に頼りきることなく伝統の手技を守り続ける職人たちの情熱が、この口溶けを支えている。江戸時代、高松藩の指示のもと医師の向井勝安らがサトウキビ栽培の試みを重ねて以来、讃岐の地で培われてきた製法は今も脈々と受け継がれている。
その核心となるのが、盆の上で砂糖と同量の水を加えて何度も捏ね上げる「研ぎ作業」だ。研ぎと押し搾りを丹念に繰り返すことで、粒子が驚くほど細かくなり、あの儚い口溶けが完成する。文化財級の歴史を誇る「三谷製糖」をはじめとする老舗工房では、熟練の職人が掌の感覚だけを頼りに温度や湿度を見極め、まさに「伝統工芸品」と呼ぶにふさわしい逸品を生み出している。茶聖・千利休が確立した茶の湯の精神とも深く共鳴する緻密な美学が、ここには生きている。