クロワッサン作りにおいて最も多いトラブルが、焼き上がりの断面が詰まってしまう「層の潰れ」です。この現象が起きる背景には、生地とバターの物理的な状態が深く関係しています。
最大の原因は、成形時に生地を強く押し潰してしまうことです。「しっかり巻こう」と指先に力を入れて締めすぎると、せっかく均一に重なり合った生地と油脂の薄い膜が圧着され、層の境界線が消失してしまいます。特に室温が高い環境では、巻き作業のわずか数分の間に折り込みバターが手の熱で軟化し、グルテン網の中に溶け出してしまいます。
また、折り込みバターの失敗も成形時の層崩れに直結します。バターが冷えすぎて硬いまま伸ばすと内部で細かく割れ、逆に柔らかすぎると生地に吸収されて「ただのブリオッシュ生地」へと変化します。成形に入る直前の生地温度は10℃〜15℃前後をキープし、触れたときに「冷たく、適度なしなやかさがある状態」を保つことが絶対条件です。