インテル(Intel Corporation)は1968年、ロバート・ノイスとゴードン・ムーアによって設立された半導体のパイオニア企業です。しかし、1980年代後半までの同社は、コンピュータメーカー向けに半導体チップを供給する典型的なBtoB(企業間取引)企業であり、一般消費者に対する知名度は決して高くありませんでした。消費者がPCを購入する際の判断基準は、あくまで「NEC」「富士通」「IBM」「Compaq」といった完成品ブランドだったのです。
この力関係を根本から覆す契機となったのが、1989年から1990年にかけてインテルジャパン(日本法人)で立ち上げられた「インテル、入ってる」キャンペーンでした。当時、製品の差別化に苦心していた日本法人のマーケティングチームと広告代理店(電通)が、「箱(PC本体)の中に入っている頭脳こそが最も重要である」という事実を消費者に直感的に伝えるため、親しみやすく語感の良い日本語フレーズとして考案しました。
この日本市場でのキャンペーンが大成功を収めた報告を受け、当時の米国本社CEOアンディ・グローブらは即座に着目。1991年にグローバル統一キャンペーンの英語表記として「Intel Inside」を正式策定し、全世界へ水平展開しました。つまり、世界で最も有名なグローバルブランディングの一つである「Intel Inside」は、日本発祥のアイデアが本社を動かして世界標準になったという極めて稀有な歴史的背景を持っています。