ピクサー作品の中でも特に綿密なリサーチと心理学者(ポール・エクマン博士やダッチャー・ケルトナー教授ら)の監修を受けて制作された本作には、知る人ぞ知る秀逸な裏設定やトリビアが多数散りばめられています。
第一に、感情キャラクターの基本形状には明確な幾何学的意図が存在します。ヨロコビは「弾ける星」、カナシミは「落ちる涙のしずく」、イカリは「硬い耐火レンガ」、ビビリは「むき出しの神経線維」、ムカムカは「苦いブロッコリー」をベースにデザインされています。輪郭線がかすかに発光粒子のように揺らめいているのは、感情が常にエネルギーとして流動していることを表現するためです。
第二に、感情の初期案は27種類以上存在したという制作秘話です。「誇り(プライド)」「希望(ホープ)」「罪悪感(ギルト)」「嫉妬(エンヴィー)」など無数のプロトタイプが検討されましたが、ストーリーの明快さを保つために第1作では5体に絞り込まれ、残されたアイデアの一部が第2作の思春期キャラクターとして見事に結実しました。
第三に、両親の司令部との構造の違いです。父親の司令部では「イカリ」が中央のキャプテン席に座り、母親の司令部では「カナシミ」がリーダーシップを取っています。さらに両親の頭の中では感情たちが全員メガネをかけていたり口髭を生やしていたりと統一感があり、落ち着いて円卓を囲んでいます。これは感情が衝突し合う思春期のライリーに対し、大人の脳内では感情同士の対話と合意形成(感情の統合)が完了していることを視覚的に証明する見事な演出です。