江の島へ続く弁天橋の手前、江ノ電・江ノ島駅からのびる洲鼻(すばな)通りに佇む「紀伊国屋旅館」。そのルーツは江戸中期の宝永年間にまで遡る。かつて鎌倉幕府を開いた源頼朝が祈願したことでも知られる江島神社への参詣講を受け入れる宿坊として開かれたのが、すべての始まりだった。
激動の明治、大正、昭和を駆け抜け、令和の今もなお暖簾を守り続ける姿は、まさに神奈川県藤沢市の観光・宿泊業における生きた伝説だ。館内に足を踏み入れると、磨き上げられた黒光りする廊下や幾千もの旅人を迎えてきた柱のぬくもりが、静かに旅情をかき立ててくれる。