今年のカンヌ国際映画祭における公式上映後、場内を包み込んだ10分間におよぶスタンディングオベーションは圧巻の一言だった。かつて最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和監督だが、今作で提示してみせたのは、これまでの作風を鮮やかに裏切る圧倒的な緊迫感と映像表現だ。
主演を務める役所広司の演技に対しては、海外の主要紙から早くも「キャリアの真骨頂」との称賛が寄せられている。スクリーンのこちら側にまで伝わる吐息、一瞬の表情に秘められた歪んだ人間の情念。言葉の壁を軽々と飛び越えるその圧倒的な存在感は、映画館に集まった世界中の観客を金縛りにした。