ドレスコーズ志磨遼平が独占告白、唯一無二の表現と制作の深淵の総合ガイドをお届けします。最新トレンドが満載です。

薄暗いスタジオの片隅で腰を下ろした彼は、自らの近況について静かに語り始めた。2026年という現在地において、ドレスコーズが目指す音響の地平は、これまでのどの作品とも異なっている。「僕がずっとやってきたのは、記憶の捏造みたいなものかもしれません」と、志磨は笑う。最新の制作現場では、ビンテージのアナログ機材と最新鋭のプラグインを極端なバランスで混交させる実験が繰り返されているという。

「弦楽器の倍音一つをとっても、完璧なピッチではなく、ほんのわずかな揺らぎや軋みをそのまま残す。EVIL LINE RECORDSのチームとは、そういうノイズにこそ人間の感情が宿るという共通認識で制作を進めています。今回のレコーディングでは、マイクの距離感や部屋鳴りの空気そのものをひとつの楽器として捉え直しました。他所ではあまり話していませんが、実はボーカルトラックの一部は、iPhoneのボイスメモで深夜に録音したラフテイクの質感をそのままマスターにブレンドしているんです。あのざらついた質感が、ハイレゾのクリアな音像の中で異物として機能する」。

音楽の制作手法が極限まで効率化された現代において、志磨が試みる逆説的なアプローチは、単なる懐古趣味ではない。剥き出しの体温をデジタルデータの隙間にどう潜り込ませるかという、極めて現代的な挑戦なのだ。