宝くじの税務における最大のトラップは、当選金を受け取った本人が、善意で家族や友人に現金を配分した瞬間に牙をむく「贈与税」です。どれほど当選金が無税であっても、それは「当選者本人」に対する優遇措置に過ぎません。当選者が自分の銀行口座に振り込まれた当選金の中から、「長年苦労をかけたから」と配偶者に1億円、「マイホームの資金に」と子供に5,000万円を無償で渡せば、それは税法上、単純な個人間贈与とみなされます。
日本の贈与税(暦年課税)は基礎控除額が年間110万円に設定されており、それを超える部分には超過累進税率が適用されます。贈与額が数千万円から億円単位に達した場合、最高税率である55%が容赦なく適用されます。善意で分けたはずの大金の半分以上が、翌年の3月15日までに贈与税として国庫に吸い上げられる事態は、知識を持たない当選者にとって悪夢以外の何物でもありません。
この壊滅的な税務トラブルを合法的に完全回避する唯一の方法が、受取手続き時における「共同購入」の主張と「当選証明書」の共同名義発行です。職場の同僚や家族でお金を出し合って宝くじを買った場合、代表者一人が窓口に行って全額を個人口座に受け取ってから後日分配してはなりません。換金手続きを行う当日に、購入に関わった全員がみずほ銀行の窓口へ出頭する必要があります。
銀行側に対して「このくじは共同出資で購入したものである」旨を申告し、それぞれの出資比率に応じた金額を各自の個人口座へ直接振り込んでもらう手続きを踏みます。そして銀行から、全員の名前とそれぞれの受取金額が個別に明記された公的な「当選証明書」を発行してもらうのです。この証明書さえあれば、各自が受け取った資金は「最初から自分自身の当選金(非課税)」として確定し、税務署から贈与を疑われた際にも、ぐうの音も出ない完全な対抗要件となります。