サイレンススズカの命を奪った直接の原因は、レース中に発症した「左手根骨粉砕骨折」です。骨が粉々に砕けて関節としての機能を完全に喪失した状態であり、当時の獣医学では治療や温存手術が不可能な重篤な損傷でした。
サラブレッドは体重が約450キロ前後あり、自らの体重を4本の細い脚で均等に支えています。1本の脚を完全に失うと、残された他の脚に過度な負担がかかり、激痛を伴う「蹄葉炎(ていようえん)」を併発して衰弱死に至るのが通例です。そのため、激しい苦痛を長引かせないための人道的判断として、レース直後に「予後不良」と診断され、安楽死の処置が執られました。陣営にとって断腸の思いとなる決断であり、当時のファンにも計り知れない衝撃を与えました。