イチローと福島弓子夫人の間に子供がいない点についても、長年にわたり様々な憶測が飛び交ってきました。しかし、関係者の証言や当時の本人の言動を丹念に追うと、夫婦が歩んできた極めて特殊かつストイックな道のりが見えてきます。
結婚当初、イチローは子供を持つことに対して前向きな姿勢を示していました。2000年代初頭の特別インタビューや親しい球界関係者への雑談の中で、「自分の子供とキャッチボールをしてみたい」「男の子でも女の子でも、野球の楽しさを伝えられたら」といったニュアンスの願望を語っていた記録が残っています。
福島弓子夫人は結婚当時34歳、イチローは26歳という8歳の年齢差がありました。女性週刊誌などでは一時、「都内の有名産婦人科に通い、不妊治療に取り組んでいるのではないか」という観測記事が掲載されたこともあります。しかし、これらは医療関係者の守秘義務の壁もあり、確たる証拠を伴ったものではありませんでした。
子供を持たなかった最大の要因として球界関係者が口を揃えるのは、イチローの極限にまで研ぎ澄まされた生活リズムです。現役時代のイチローは、起床時間、球場入り、試合前の食事(弓子夫人が作る特製カレーや毎日の特製おにぎり)、練習のルーティン、道具の手入れに至るまで、1分1秒の狂いも許さない厳格な規律を課していました。
弓子夫人はその生活を365日完璧に支えるマネージャーであり、最も深い理解者でした。家庭内に子供を迎えることで生じる生活リズムの乱れや環境変化を避け、すべてを「メジャーリーガー・イチローのコンディション」に捧げた結果として、自然と2人だけの生活形態が選択されていったというのが、最も実態に近い分析です。