このエピソードを語る上で絶対に外せない存在が、怪人「くらやみまん」である。シルクハットに黒ずくめのマントをまとい、すべてを闇の中に閉じ込めようとする彼の立ち振る舞いは、どこか怪奇映画の怪人を彷彿とさせた。
ばいきんまんの手引きによって猛威を振るうくらやみまんだが、彼の行動動機は純粋な悪意というよりも、世界の輪郭を消し去りたいという虚無への衝動に近い。そこに加わるばいきんまんの利己的な欲望が、闇の恐ろしさをより生々しいものへと変えていく。
光を奪う者と、光を灯そうとする者。二者の激突は、子供たちの心に「暗闇への根源的な恐怖」と同時に、「自らの足で闇に立ち向かう勇気」を強烈に刻み込んだ。