1988年夏の劇場公開時、本作は宮崎駿監督の『となりのトトロ』との二本立てという形で東宝から配給された。緑豊かな昭和30年代の農村を舞台に、子供たちの夢と冒険を描いたトトロ。それに対し、昭和20年夏の神戸で飢えと孤独に追い詰められていく幼い兄妹を描いた本作。あまりにも対極的な二作品の同時上映は、当時の映画館を訪れた観客に強烈な心理的ギャップを与えた。
愛らしいトトロのポスターと並べられたとき、『火垂るの墓』のビジュアルが一見すると「美しく幻想的なアニメーション映画」に見えるようデザインされていたこと自体が、緻密な罠だったのかもしれない。光と影、生と死、希望と絶望。スタジオジブリという創作集団が持つ表現の振り幅の凄まじさは、この映画史に残る興行の試みによって決定づけられた。