同じ混色レシピを用いても、扱う絵の具の種類によって発色や乾燥後の仕上がりは劇的に変化します。現場の画板上で生じるリアルな特性の違いを把握しておくことが不可欠です。
透明水彩:白絵の具を排し「紙の白」と水のグラデーションで描く
透明水彩を使用する場合、混色レシピで「白」を大量に混ぜる手法は基本的に避けるのが定石です。透明水彩に含まれるアラビアゴム等の媒体は透明性が高く、白(チャイニーズホワイトなど)を混入すると粒子が不透明化し、水彩特有の瑞々しい抜け感が損なわれてしまいます。
水彩における「色白肌」やハイライトは、水で絵の具を極限まで薄め、画用紙そのものの白色を透かして見せることで表現します。黄色と赤をごく淡く溶かした水を広い平筆で塗り広げ、乾かないうちに頬のあたりに赤みをほんの少し滲ませる(ウェット・イン・ウェット)技法が、最も生き生きとした肌を生み出します。
アクリル絵の具:乾燥後の「トーンダウン現象」を見越した配合
アクリル絵の具は樹脂エマルションをバインダーとしており、優れた隠蔽力と速乾性を誇ります。しかしアクリルには特有の難点が存在します。それは「濡れている時よりも、完全に乾いた後の方が色がワントーン暗くなる」という物理的性質です。
パレット上で「ちょうど良い健康的な肌色」に調合してキャンバスに塗ると、乾燥後に予想以上に赤黒く燻んでしまうトラブルが頻発します。アクリルで肌を描く際は、「理想とする完成イメージよりも半歩明るめ(白をやや強め)」に調合して塗り進めるのが、プロが現場で常用する必須のテクニックです。
100均絵の具の盲点:体質顔料の多さと白浮きへの対処法
ダイソーやセリアなどの100円均一ショップで手に入る絵の具セットは、コストパフォーマンスに優れる一方で、顔料そのものの濃度が低く、増量剤(体質顔料)が多く配合されている傾向があります。
100均の白絵の具を肌色作りに大量投入すると、乾いた表面が粉を吹いたように白浮きし、プラスチックのような平板な質感に陥りがちです。100均の画材を使う場面では、白の分量をなるべく抑え、少量の水で黄色と赤のエッジを調整しながら、少しずつ塗り重ねて発色濃度を稼ぐ使い方が推奨されます。