桃華楽堂の核心は、その外観の美しさだけにとどまらない。八角形という独特の平面プランは、東洋思想における調和を象徴すると同時に、音響建築としての極めて実験的な挑戦でもあった。内部は鉄筋コンクリート造でありながら、音の不自然な乱反射を防ぎ、アコースティック楽器本来の繊細な響きを隅々まで行き渡らせるための緻密な計算が施されている。
天井を見上げれば、まるで開花した花弁のように放射状のリブが伸び、中心部へ向かって優美な曲線を奔流させている。電気的な音響拡声装置に頼ることなく、弦の震えや声楽の息遣いが自然に堂内を満たす。限られた皇室行事や演奏会でのみ使われる内部空間は、まさに選ばれた響きだけを受け入れる聖域だ。外観のモザイク画に隠された音符の意匠など、細部に目を凝らすほどに今井が仕掛けた音へのオマージュが浮き彫りになる。