電子署名やペーパーレス化が急速に進展する現代において、日本の文房具・事務用品産業は大きな分岐点に立っている。日常の事務作業が画面上で完結するからこそ、物理的に「ハンコを押す」という行為そのものが、意思決定の重みを示す神聖な儀礼として再評価されているのだ。
大量生産・大量消費型の消耗品が淘汰される一方で、熟練職人の手作業に支えられた伝統工芸品的な文具への関心はむしろ高まっている。指先に朱肉の重みを吸い付かせ、大切な書面に印影を落とす——その一瞬の所作に確かな魂を込めるための道具として、本物の朱肉が求められている。