代紋の持つ強烈な引力は、日本映画の黄金期を支える原動力でもあった。深作欣二監督の金字塔『仁義なき戦い』シリーズでは、敗戦直後の混沌とした広島を舞台に、血で血を洗う利権抗争と看板をめぐる剥き出しの野望が描かれた。あのフィルムの中で、代紋は泥臭い人間の業そのものだった。
時代が下り、その神話を冷徹に解体したのが北野武監督の『アウトレイジ』シリーズだ。義理人情のメッキを剥ぎ取り、大組織の幹部たちが代紋の威光を道具として使い捨て、互いを食い物にする様を乾いた暴力描写で活写した。バッジに忠誠を誓う古参が嗤われ、狡猾な裏切りが横行するポエティックな暴力劇は、国内外で絶賛を浴びた。
昭和から平成、そして令和へと移り変わるヤクザ映画の系譜は、そのまま代紋というフィクションの盛衰史でもあったのだ。