本作の最大の推進力となっているのが、世界的映画監督である是枝裕和と、主演を務める名優・役所広司の奇跡的なコラボレーションだ。二人がタッグを組むのは実に数年ぶりのこと。現場における二人の掛け合いは、まるで長年連れ添った職人同士のようだった。脚本の台詞をそのまま読むのではなく、子役たちの生の反応に合わせてその場で言葉を紡ぎ直す。型にはまらない演技指導が、画面に圧倒的なリアリティをもたらしている。
役所広司が演じるのは、定年を間近に控えた不器用なベテラン教師役だ。「台本を読むたびに、胸の奥が痛くなった」と彼は語る。若手俳優や子役たちとの共演においても、彼は威圧感を一切見せない。撮影の合間には子役たちと冗談を交わし、現場の緊張をほぐす姿が印象的だった。脇を固める豪華キャスト陣もまた、この熱量に引き寄せられるように迫真の演技を見せている。演技を超えた人間の「生の感情」が、撮影現場の空気そのものを支配していた。