抗ヒスタミン薬を服用したドライバーのブレーキ反応速度を測定した臨床実験データがある。その結果は戦慄に値するものだった。血中アルコール濃度が酒気帯び運転の基準値(0.15mg/L)に達した状態と同等、あるいはそれ以上に認知や判断の遅延が生じていたからだ。
恐ろしいのは、当事者に「酔っている」自覚がまったくない点にある。専門用語で「インペアード・パフォーマンス(気付きにくい能力低下)」と呼ばれるこの症状は、集中力、記憶力、空間把握能力をじわじわと奪い去る。作業ミスを犯しても、本人は「今日は少し疲れているだけだ」と片付けてしまう。数字は残酷だ。実験室内でのタイピングエラーや単純計算の正答率は、本人の主観的な眠気レベルとは無関係に跳ね上がる。見えない泥酔状態のまま、日常をこなそうとしているに等しい。