戸田恵梨香の演技力と評判を語るうえで欠かせないのが、「圧倒的な役への没入(憑依型)」と「冷徹なまでのセルフプロデュース(リアリズム)」の高度な両立です。
映画監督やドラマプロデューサーらの証言によれば、彼女の現場での最大の特徴は「台詞の裏にある感情のグラデーションの解釈力」にあります。『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』で見せたテンポの良い軽妙なコメディの間合いと、『母性』で見せた自己愛と母性神話に引き裂かれる女性の冷淡な視線。これらは全く異なるアプローチでありながら、どちらも嘘偽りのないリアルな人間としてスクリーンに定着します。
また、彼女の身体表現において特筆すべきは「声のピッチと視線のコントロール」です。『スカーレット』で演じた陶芸のシーンでは、実際に数か月に及ぶ猛特訓を重ねてプロと同等の指先の動きを体得しました。小手先のテクニックに頼らず、役の肉体的バックボーンを身体に刷り込む徹底したストイシズムが、作品全体の説得力を決定づけています。