この特異な統制モデルは、日本経済に計り知れない恩恵をもたらしたと同時に、自律的なリスク管理能力を奪う致命的な毒薬ともなりました。護送船団方式のメリット・デメリットを客観的に比較すると、時代ごとの明暗がくっきりと浮かび上がります。
最大の功績は、戦後の復興期から1970年代の高度経済成長期にかけて、国民の預金保護と信認を完璧なまでに維持した点です。預金者は「日本の銀行にお金を預けておけば絶対に安心だ」という絶対的な信頼を持ち、集まった莫大な個人マネーは製鉄、自動車、電機といった基幹製造業へと長期・低利で供給されました。これが「東洋の奇跡」と呼ばれた経済成長の強固なエンジンとなった事実は否定できません。
一方で、競争を排除したぬるま湯の環境は、金融機関からイノベーションの意欲を根こそぎ奪い去りました。どこに預けても横並びの金利、他行と同じ金融商品、そして失敗してもお上が助けてくれるというモラルハザード(倫理の欠如)が蔓延しました。預金者は自由市場であれば得られたはずの多様な利回りや選択肢を奪われ、実質的に低金利政策のツケを負わされ続けたとも言えます。