「一般的な豚肉とは、脂の融点がまったく違う」——取材に応じたベテランシェフは開口一番、そう断言した。厚木豚の最大の特徴は、体温で溶け出すほど低融点で上質な脂質にある。口に入れた瞬間、重たさやしつこさを一切感じさせず、すっと舌の上で広がるシルキーなコク。それでいて後味は極めて軽やかだ。
この独自の旨味を支えているのが、徹底計算された飼料バランスと独自の熟成プロセスである。赤身部分にはグルタミン酸やイノシン酸などの旨味成分が凝縮されており、加熱しても肉汁が逃げない。ジューシーでありながら歯切れが良いという矛盾するような食感が、多くの食通たちをトリコにする最大の理由と言える。