1990年代末、それまでの派手な特殊メイクや血しぶきに頼るスプラッター映画とは一線を画す、静謐で湿度の高い恐怖が日本のテレビ界を席巻した。その震源地こそが、フジテレビジョンが手掛けたオムニバス形式のテレビドラマ『ほんとにあった怖い話』、通称「ほん怖」である。
もともとの源流は、朝日新聞出版(旧・朝日ソノラマ)が刊行していたホラーコミック誌にある。読者から投稿された実体験の手記を漫画化した生々しいエピソード群は、虚構のフィクションにはない圧倒的なリアリティを放っていた。それを映像化するにあたり、制作陣が徹底したのは「どこにでもある日常」の忠実な再現だった。
学校の階段、アパートの浴室、夜間勤務のオフィス。誰もが知るありふれた空間が一瞬にして異界へと変貌する演出は、それまでのオカルト番組の枠組みを根底から覆した。日常と地続きの場所で怪異が起きるからこそ、視聴者はテレビを消した後も自室の闇に怯えることになる。