500年を経てもなお、なぜ肉体が衰えないのか。最先端の海洋生物学(Marine Biology)が解き明かしたデータは、既存の老化理論を根底から揺さぶるものだった。通常、多細胞生物は呼吸によって生じる活性酸素で細胞膜やタンパク質が酸化し、加齢とともに機能不全を起こす。ところが、アイスランドガイの生体内では、活性酸素による酸化ダメージが極限まで抑制され、500年を経過してもタンパク質の変性や損傷がほとんど見られなかった。
秘密は、驚異的な耐久力を持つ細胞膜の脂質組成と、損傷を受けたタンパク質を瞬時に修復・分解する特殊な酵素群の働きにある。さらに、ミトコンドリアのエネルギー産生効率を極限まで落とす「代謝の冬眠状態」を自在にコントロールし、無駄な細胞死(アポトーシス)を防いでいることが判明した。研究者たちはこの生体防御カスケードを応用し、人間のアルツハイマー病や心疾患、肌の細胞老化を根本から遅らせる治療薬の開発に着手している。