ワン・フォー・オールという特異な存在を理解する上で避けて通れないのが、悪の支配者オール・フォー・ワン(AFO)とその実弟である初代・死柄木与一の愛憎劇です。
超常社会黎明期、他者から個性を「奪い、与える」ことで人々を服従させ、暗黒街の覇者として君臨した兄AFO。その歪んだ支配欲に対し、生まれつき体が弱く、兄の悪行を非難し続けたのが与一でした。無力に見えた与一を完全に屈服させるため、兄は「力を蓄積する個性」を力づくで与えます。しかし、皮肉にも与一の肉体には、本人すら気付いていなかった「個性を他者へ与える(譲渡する)個性」が眠っていました。
この2つの因子が混ざり合った瞬間、奇跡的に生まれたのがワン・フォー・オールです。奪うことで他者を支配し、世界を自分のためだけに統括しようとする「All For One(全ては一人のために)」。それに対し、一人の小さな力と意思を紡ぎ、やがて全ての人々を救う力へと昇華させる「One For All(一人はみんなのために)」。
語源として広く知られるラグビーの伝統精神「One for all, All for one」やアレクサンドル・デュマの『三銃士』の標語が示す通り、この力は本来「連帯と利他」の象徴です。兄による絶対的なエゴイズムから産み落とされたカウンターカルチャーこそが、この能力の宿命でした。