「もう大丈夫だ! なぜなら、私が来た!」――この言葉が響いた瞬間、どれほど凄惨な現場であっても絶望の空気は一変した。週刊少年ジャンプの連載開始当初から読者の心を掴んで離さなかったオールマイトの「私が来た」というフレーズは、作中において治安維持の絶対的防壁として機能していた。
作中で描かれたこのセリフの真意は、単なるヒーローの到着アナウンスではない。その根底には、先代ワン・フォー・オール継承者である志村菜奈から授かった「一番救けなきゃいけない人間は、敵(ヴィラン)に捕らわれてる人じゃない。助けを待つ人々の恐怖を救けなきゃいけない」「笑ってる奴が一番強い」という哲学が深く根を張っている。
関係者の証言や当時の制作インタビュー資料を紐解くと、原作者・堀越耕平氏はこのフレーズに「自らを縛る呪縛と覚悟」という二面性を意図的に持たせていたことがわかる。オールマイトこと八木俊典は、内臓の半分を失い、活動限界が迫るボロボロの肉体を抱えながらも、血反吐を呑み込んで笑ってみせた。つまり「私が来た」のセリフの意味とは、人々を恐怖から解放すると同時に、逃げ場のない極限状態で己を奮い立たせるための命がけの誓約だったのである。