読者の記憶に焼き付くこのオールマイトの決め台詞には、緻密に練られた表現のルーツと、物語の根幹を支える作劇上の必然性が存在します。
外形的な元ネタとして挙げられるのは、スーパーマンをはじめとするアメリカン・コミックスの黄金期ヒーローへのリスペクトです。スーパーマンの登場を告げる古典的な決まり文句「Look! Up in the sky!(空を見ろ!)」のように、現れただけで事態の好転を誰もが確信するアメコミ的王道クリシェが、堀越氏の卓越した筆致で日本型少年漫画のフォーマットへと見事に再構築されました。
一方、作中設定における情緒的・精神的な由来は、オールマイトの師である先代ワン・フォー・オール継承者・志村菜奈の遺した教えにあります。「助けを求める人間は本当に怖い思いをしている。命だけじゃなく心も救うために、どんなに怖くても笑っていろ」という師の言葉を胸に刻んだ彼は、自らの恐怖を押し殺し、人々に絶対の安心を与えるための免罪符として笑顔と「私が来た」の宣言を紡ぎ出しました。