物語を最初期から読み解くと、原作者・堀越耕平氏による緻密な伏線が随所に張り巡らされていたことが分かります。読者間における青山優雅の伏線回収まとめとして真っ先に挙げられるのが、原作第168話で描かれた奇妙な「チーズ事件」です。
深夜、緑谷出久の部屋のベランダに突如現れ、フランス産チーズで「ぼくはしっているよ」という不気味なメッセージを残した青山。当時はサイコホラー的な演出として読者を困惑させましたが、その真意は後に対比構造として見事に結実します。デクもまた、生まれつき無個性であり、後天的にオールマイトから力を譲り受けた存在でした。さらに重要な共通点は「与えられた個性が肉体に馴染んでいない」という点です。デクが骨折を繰り返したように、青山もレーザーを撃つと腹痛を起こし、特注のサポートベルトなしには光が漏れ出てしまう欠陥を抱えていました。
青山はデクの戦い方や身体の異変を見て、彼もまた「自分と同じく後天的に個性を得た者」であると直感していたのです。あのメッセージは悪意の脅迫ではなく、「僕と同じ苦しみを抱えている君なら、この呪縛に気づいてほしい」という、張り裂けんばかりのSOSのサインでした。さらに、林間合宿編で敵連合に襲撃された際、茂みに隠れながら見せた尋常ではない震えや冷や汗など、彼の挙動の端々に「加害者であり被害者でもある少年」の心理的葛藤が刻み込まれていたのです。