日本小児歯科学会や日本矯正歯科学会の各種学術発表でも繰り返し強調されている通り、小児矯正 開始時期の決定打となるのが「ヘルマンの歯齢 IIIA」です。この時期は、噛み合わせの基準点となる第一大臼歯が上下左右で噛み合い、さらに笑顔の印象を左右する前歯4本(上下計8本)が生え揃ったタイミングを指します。
IIIA期が混合歯列期 治療(いわゆる第1期治療)のゴールデンタイムとされる理由は、大きく3つ存在します。
第1に、永久歯 萌出時期の全体像を予測するための骨格的スペースが明確になる点です。前歯4本が生え揃うと、顎骨の幅に対して永久歯がどれだけ重なり合っているか(叢生・ガタガタの程度)が確定します。顎が小さくて並びきらない場合、顎の横幅を広げる急速拡大装置や床矯正装置、マウスピース型装置を用いて土台を整えられるタイムリミットが迫っている合図でもあります。
第2に、骨の代謝速度と適応力です。IIIA期の子どもの骨はまだ柔軟性に富み、軽微な矯正力で顎の幅を拡大したり、上下の顎の前後バランスを誘導したりすることが容易です。この段階を過ぎて側方歯群の生え替わり(IIIB)が進んでしまうと、乳歯の根が吸収されて固定源として使いづらくなり、装置の選択肢が制約を受けます。
第3に、子どもの心理的受容性です。小学校中学年前後は、矯正装置の装着や毎日の清掃、マウスピースの装着時間を自己管理できる自立心が芽生える時期と重なります。低年齢すぎる時期の無理な装置装着はトラウマを生み、治療放棄に繋がりかねませんが、IIIA期であれば本人の納得感を得ながら前進することが可能です。