日本全国のバンドが憧れる全日本吹奏楽コンクールの舞台。その頂点である金賞を幾度となく手にしてきた裏には、音楽監督・指揮者を務める近藤久己氏の存在がある。スコアの奥深くに隠された作曲家の意図を読み解き、100人近い奏者の個性を緻密に束ね上げる手腕は、まさに職人技と呼ぶにふさわしい。
練習風景を取材すると、1小節の音のバランスや和音のニュアンスに対して一切の妥協を許さない緊張感が漂っている。しかし、その根底にあるのは音楽への深い愛情だ。指揮者と団員が対等な対話を通じて音楽をビルドアップしていく姿勢こそが、コンクールの審査員をも唸らせる圧巻の表現力を生み出している。