「HE IS MINE(彼は私のもの)」という独占欲をむき出しにした英語タイトルとは裏腹に、楽曲全体を支配しているのは「決定的に自分のものではない」という冷徹な現実です。本作の主人公は、相手にとって本命ではなく、いわゆる「都合のいい関係」に甘んじている女性。尾崎世界観は、男性でありながら驚くほど解像度の高い女性の一人称視点を用いて、その歪んだ愛情の力学を克明に描写しています。
朝方の気だるい空気感、ベッドの中で交わされる乾いた会話、そして相手がふと見せる無責任な優しさにすがりついてしまう弱さ。歌詞の中で繰り返される「彼氏面しないでよ」という強がりは、裏を返せば「彼氏になってほしいのに、なってもらえない」という絶望的な願望の裏返しにほかなりません。尾崎世界観の手がける歌詞解釈において、この「言葉と本心の決定的なズレ」こそがリスナーの胸を締め付ける最大の要因となっています。
相手の部屋に残された私物、都合よく呼び出される夜、そして朝が来れば他人へと戻る冷たい境界線。主人公は自分が都合よく扱われている事実を100%理解しながらも、その関係を断ち切ることができません。タイトル「HE IS MINE」は、現実への抵抗であると同時に、自らを欺くための悲痛な自己暗示として響きます。